インタビュー

地域で孤立する子どもの「声なき声」を受け止める(後編) ー子どもたちの価値観によりそい、頼れる大人になるー


虐待、非行、貧困など・・・子どもたちを取り巻くこのような問題の背景には「地域からの孤立」があります。このような問題の構造と解決方法について、現場で子どもたちの支援にかかわるNPO法人PIECESの荒井佑介さんにお話を伺いました。
前編はこちら!

話し手:NPO法人PIECES副代表 荒井佑介さん
聞き手:NPO法人OVA 伊藤次郎

プロフィール
ホームレス支援からはじまり、6年前に子どもの貧困に関わり始め、中学3年生の学習支援を皮切りに子どもの支援に力をいれる。子ども達に勉強を教えていく中で、彼らの抱える複合的な課題を学習支援だけでは解決できないと感じ、東京都内で居場所支援・家庭訪問・生活相談・進路支援・就労支援と子どものニーズにそって幅広く活動を広げる。2016年にNPO法人PIECESを立ち上げ、副代表に就任。出会った子にニーズに応じて、多様な大人の協力を募り、オーダーメイドの支援を展開している。

PIECESとは?
2015年より活動開始。
主に子ども達の伴走者の育成を実施しながら子ども達の居場所作りも行なっています。現在、38名の伴走者の育成を行い、豊島区と足立区で約230名の子どもと若者に関わっています。伴走者以外に約300名の協力者を巻き込み子ども達に支援を提供しています。
http://www.pieces.tokyo/

このインタビューはNPO法人OVAが行う「声なき声」プロジェクトの調査の一部を記事にしたものです。

「支援はダサい?」子どもたちの価値観に寄り添うこと

PIECES

ーー荒井さんは困難を抱える子どもたちが孤立しない状態をつくろうと、PIECESで活動をしていますね。現状を見て、いま子どもたちに必要な支援は何だと考えていますか?

荒井:そもそも子ども達の価値観にあった支援が必要ではないかと思います。支援者の価値観と、支援を受ける側の価値観にギャップがあるため「支援があるにもかかわらず届いていない」現状があると思うんです。例えば、非行をしてしまうような一部のこどもたちにとって、「支援は地味でダサい、かっこ悪い」といったイメージもある。

そこを埋めあわせるためには、子どもたちの価値観に寄り添うことが必要だと思います。誰だって、自分と全く価値観が違うひとには相談はしにくいですよね。

ーー「子どもたちの価値観」とは具体的にどんなものが挙げられますか?

荒井:一概には言えないですが、不登校の子達で多いのはゲームが好きでインターネットの世界で共通の趣味を持っている人と繋がっていることだとか、非行少年などであれば、「おしゃれ、かっこいい」といったことにとても敏感です。子ども達は一人一人、生活スタイルや好きなこと、文化を持っていると思います。
趣味などを合わせろというわけではないですが、彼らが身をおいている環境を知ることはとても重要。

世代の違いも価値観の違いを生むこともあるかと思います。その点若者は子どもたちと感覚が近い分、価値観を共有しやすいと思います。

あとは似たような経験の持ち主とは、分かり合えていることが多いようです。かつてはご自身も非行に走った経験のある方がいたのですが、彼は子どもたちとすぐに打ち解けていました。同じ目線を持つことができるため、信頼関係を築きやすいのでしょう。

でも彼のように支援職についていないひとは、これまで子どもたちと関わりを持ったとしても“支援者”としては認識されていませんでした。でも多様な支援を届けるためには、こんな風に様々なひとを巻き込んでいく必要性を感じています。

「支援じゃないぞ」といった姿勢で子どもたちと接する

PIECES

ーー実際にPIECESでは、支援が必要にもかかわらずこぼれ落ちてしまう子どもとどんな風に関わっているのでしょうか。支援があるという情報は、どう発信しているのでしょうか?

荒井:PIECESとして情報を発信するというより、子どもの口コミで広まっている感触があります。子ども同士の横のつながりをわたしたちはうまく活用しています。以前ドッジボール大会を開催したときなんかは、一人の子が、周りの友達をたくさん連れてきてくれたのですが、みんな抱えている課題などが似ていました。

ーー親や学校などを通してではなく、PIECESでは直接子どもへアプローチしているのですね。

荒井:そうですね。同じ支援でも、大人からの紹介では行く気になれなくても、仲の良い友人が言っていることには興味を持てる場合ってあると思うんです。

ーー荒井さんご自身は、現場でどんなふうに子どもたちと接しているのでしょうか。

荒井:「支援=指導的である」という印象を変えたいと思っていて、僕は「支援じゃないぞ」といった姿勢で子どもたちに接するようにしています。

最初は子どもたちの輪を乱さないように、僕自身がまず、子どもたちのコミュニティに入れてもらうんです。徐々にお互いを知り関係性が築けてきてから支援者としての姿を見せる。「この人に相談していいんだ」「何かあったら力になってくれるらしい」と思ってもらえたらと考えています。

子どもたちの輪に入るときは、言葉づかいや着ている洋服のブランド、好きな音楽など、子どもたちの人となりをよく観察しています。するとだんだん価値観がわかってくるように思うのです。

同じコミュニティ内に属することで些細な変化をキャッチする

PIECES

ーー観察により子どもたちの価値観を知る。さらに同じコミュニティ内にいることで、彼らのキャラクターや子ども同士の関係性も知ることができそうですね。子どもたちにとって荒井さんは「お兄さん」のような存在なのでしょうか?

荒井:そうなのかもしれません。子どもたちはPIECESの活動のことは知らないこともありますし、僕が支援者ということも後になってから気づくこともあります

以前子どもたちのコミュニティ内をよく見渡してみたときに、子どもの1人であるAが「勉強したい」と思いはじめたと知りました。その友人のBも同じように勉強に関心があったけれど、2人はお互いそのことを知らない状態で。きっと友人グループの中では言いづらかったのだと思います。

そのときはAとBが2人でいるときに、私たちから勉強のことを切り出しました。すると2人で一緒に勉強がするようになったのです。そこからさらに友人のCも勉強をはじめたり、逆にDは勉強はしないけれど違う道で頑張ることを選んだりしました。

ーー荒井さんたちが関わることで、子どもたちが自分の道に進み始めたんですね。孤立している子どもたちが集まって非行に走ってしまう、そこでさらに孤立化が進むなど、特定のコミュニティにのみ属することは、問題も起こり得ます。そこにPIECESという支援者にみえない支援者が介入することで、社会との接点を作っている、ということでしょうか。

荒井:コミュニティをよく観察して価値観を知ることで、子どもたちの些細な心境の変化にもいち早く気づきくことができます。

それは一人一人の“今のニーズ”を知ることにもつながると思います。「将来のことを考えはじめている」「家庭のことで悩んでいる」「友人関係がうまくいかない」など、子どもたちにも日々いろいろなことが起こりますから。

そして、その変化に気づいたら、適切な関わりや支援につなげるように働きかけをして、サポートして行きます。

この話は非行に走る子どもだけではなく、引きこもりがちな子どもなど、様々な状況に共通する部分もあります。PIECESの支援は「地域から“孤立”した子ども」全員が対象です。地域ごとによく調査をして、どんな課題を抱えた子どもが多いかなど傾向を把握することで、そのときに必要な支援をしていきたいと考えています。

支援者ではなく「一緒にいて楽しい存在」を目指す

PIECES OVA

ーー支援機関へなかなか届かない「声なき声」に対して、子どもたちと同じコミュニティ内に所属することで耳を傾けるというPIECESの子どもたちへのアプローチ方法。これらを踏まえて、今後のPIECESではどんな展望を抱いていますか?

荒井:先ほども少し触れた子どもたちの「価値観」にどう寄り添っていけるのかを、今後も模索していきます。現状支援の職に就いているひとたちが、多様な事情を抱える全ての子どもと近い価値観を持つことは難しいと思うのです。であれば、最初から価値観が近い大人に支援に加わってもらうことが理想的です。そうした人たちを支援者に仕立てることを考えていきたいと思います。

ーーこれまでPIECESが築いてきた人間関係からつながりの形成ができそうですね。

荒井:そうなんです。活動する中で、子どもの価値観やニーズを知ることを徹底してきました。

これまで足立区の非行少年達をよく見てきたのですが、そこでの観察をを生かして、足立区では若者が集まるクラブのような雰囲気の居場所や学習支援、就労支援を進めようとしています。今後もこれまで積み上げてきたノウハウを、こうした場の設計に役立てていきたいです!

声なき声プロジェクトを支援する


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